この問いについて考えてみて、人を殺したい場合、殺してはいけない理由を列挙することは出来ます。
●人類という種族を人類自身が途絶えさせるのはおかしい
●捕まったら罰を受ける
●周りの人が悲しむ
●反撃されて痛い目に合う
などなど他にもたくさんありますが、私は心の底から納得することは出来ませんでした。
人が生きているというのはこの世界に存在しているということで、殺すということは強制的に退場させることです。
逆のことはどうかと考えてみると、それは登場させること、つまり産む(男性の場合は「産んでもらう」ですが、便宜上「産む」にまとめます)ことです。なぜ産みたいのか?と考えた時、「理由は無い」というのが自分の答えでした。
ただ欲しいから産むだけです。
「種族を途絶えさせたくないという本能である」などの分析的な理由づけや、「世間体」などの打算的な理由も考えられますが、このような「理由」が必要なのは、「産みたい」という情動が無いからです。というか、根本的に、欲望に個人の意識内の理由はありません。(バックグラウンドを分析する上では別です)
同じように「人を殺す」について考えると。もし殺したいと思っているのであれば、「殺してはいけない理由」で、心の底から納得できるものは無いことになります。殺したいという情動がある以上、それには理由がなく、無い以上否定する理由もありません。
なので、「人を殺したい」という欲がある人間に、「殺してはいけない」と心底納得させるのは諦めた方が賢明だと思います。
「殺す」という行動を起こさせないように理由を列挙して止めるだけしか出来ません。
逆を返すと、「殺したい」と思ってしまっていることを否定せず、その欲は欲として認め、その上でコントロールできるよう導くのが良いのでは無いでしょうか。